点訳アラカルト

トニカが2006年3月に「第15回音楽教育振興賞」の助成部門を受賞いたしましたことは、すでに「トピックス」に掲載しいたしましたが、「財団法人音楽教育振興財団会報 第16号」(平成18年6月30日発行)にトニカ会長の挨拶が掲載されました。今回、その会報に掲載されたトニカ会長の挨拶を「点訳アラカルト」に財団のご好意により転載させていただきました。

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第40回 点訳を通して新しい出会い
2006.07.15掲載
点字楽譜普及会「トニカ」代表  松永 朋子

点字楽譜普及会「トニカ」は1987年に発足いたしました。来年は20周年の記念すべき年を迎えます。それに先駆けて、栄誉ある「音楽教育振興賞」を受賞いたしましたことに「トニカ」一同大変感動しています。この受賞は、「トニカ」が20年間コツコツと取り組んでまいりました楽譜点訳と、点字楽譜の普及活動に対して大きなご褒美を頂いたと、皆で喜びを噛みしめています。

また、贈呈式当日のご講評も心に響きました。祝賀会では皆様との歓談のひと時を楽しく過ごさせて頂ました。音楽教育振興財団の皆様をはじめ、各関係者の皆様方に心からお礼申し上げます。有難うございました。

音楽史におけるロマン派の時代は、メンデルスゾーン、ショパン、シューマンなど、すばらしい作曲家が生きた時代であり、珠玉の楽曲が数多く生まれた時代でした。

点字の創案者であり、点字楽譜の創案者でもあるルイ・ブライユも同時代に生きた人です。ルイ・ブライユは1809年パリ郊外で生まれました。ブライユは3歳の頃に事故で失明しました。ブライユは教会でオルガンを研究し、モーツァルトやベートーヴェンのピアノ曲を巧みに演奏したそうです。15歳の頃には点字で音階を七つの違ったオクターヴで書くことに成功したと言われています。

私たちはショパンやシューマンなどロマン派の楽曲も数多く点訳しています。ショパンの音楽もルイ・ブライユの点字も時と場所を経て現代に受け継がれました。その軌跡に深く感動いたします。

昨年4月、点字楽譜連絡会(点譜連)が発足しました。国内の点字楽譜の情報を集め、広く国内外に広める事を目的としています。近い将来には日本の点字楽譜はインターネットでも紹介され、世界中で自由にダウンロードできるようになるでしょう。

そのことは視力しょうがい者の音楽をする可能性を無限に広げ、職業の道をも広げていくでしょう。現在「トニカ」のユーザーの中にも海外で音楽を学ぶ若者達がいます。視力に障害を持ちながらも単身果敢に外国で生活しています。

4月は新しい学期の始まりの季節です。「トニカ」にとって1年で一番忙しい季節です。点字プリンターは一日中働き、私たちは製本作業や、点訳依頼の楽譜の打ち合わせに忙しく、事務所は喧騒に満ちています。でもその喧騒は希望でもあります。

この春もたくさんの点訳依頼がありました。点訳を通して新しい出会いもありました。ユーザーの方とお会いする機会は殆どないのですが、私たちは知っているのです。どれほど真剣に、深い愛情を持ってその楽譜を読んでくださるか、点が磨耗するほど繰り返し読み、指にこめられた魂の、そのなかから素晴らしい音楽が生まれるのです。

次回もお楽しみに・・・。
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