トニカ通信

第18号                    2016年5月
 新緑の鮮やかな季節となりました。 賛助会員の皆様にはご清祥のことと存じます。 いつも温かいご支援をありがとうございます。心からお礼を申し上げます。
また、熊本・大分地方の皆様にはこの度の震災のお見舞いを申しあげます。 トニカ通信第18号をお送りいたします。本年度もどうぞ宜しくお願いいたします。

1 トニカの活動のご報告   
 2015年度は川口春美会長を中心に、点字楽譜の依頼に応じて、できるだけ早く正確な点訳に努めました。 この結果、新たな入力4,732ページと、点訳済みの138件の点字楽譜を利用者に提供することができました。また、懸案となっていました、トニカ点字楽譜を点字楽譜利用連絡会の一覧表に加える作業を完了しました。このことによりトニカの点字楽譜の利用数がさらに増加することが期待されます。 皆様から寄せられました賛助会会費は、これまでどおり利用者の負担軽減の一助として使わせていただきました。また、一昨年度に引き続き、東京白金ロータリークラブ様からご寄付を賜りました。こうした温かいご理解・ご支援は、私どもに、更に努力を続ける力を下さいました。篤く御礼申しあげます。
 本日、2015年度賛助会会計の報告(別紙)をいたしますのでご覧下さい。
 トニカでは去る4月20日に第29回定期総会を開催し、新たに示野純子が会長に就任いたしました。2016年度も一同心新たに、利用者に親しまれ頼られる点訳グループとして努力いたします。

2 賛助会員継続のお願い
  目に障害があり楽譜が見えなくても、音楽に情熱を傾ける人がいる限り、 私達は楽譜の点訳にささやかな努力を続け、彼ら彼女らの要望に応えていきたいと思っております。
 どうぞこうした趣旨をご理解いただき、皆様には是非、引き続き賛助会員としてご支援賜りますよう心からお願いいたします。    

3 会員及び賛助会員お誘いのお願い
  これからも点訳の活動を続けていくために、私どもは、新たに点訳ボランティアをしてみようという方に、お仲間に入って下さることを強く願っております。お知り合いの方にお声掛けして下さると大変嬉しく存じます。
 また、点訳ボランティアはできないが、トニカの活動に興味を持たれ、ご支援下さる方がいらっしゃれば、賛助会員としてご紹介いただければ幸いに存じます。
 和歌山市在住の利用者、菅田利佳様よりご投稿をいただきました。ピアノを演奏される高校生の菅田さんが、点字楽譜に寄せる思いをスピーチのテーマとして発表された(当時中学生)録画の音声を、文章化することを了解していただきましたので以下に掲載いたします。
               [ 広報担当 斎藤、伴 ]


       点字楽譜がくれたもの
                     菅田利佳
 点字楽譜との出会い、それは私が将来の夢をいだくきっかけとなった出来事です。この出会いによって、私の音楽の世界は大きくひらかれました。私が点字楽譜に初めて触れたのは、小学三年の時です。それまでは、耳からの情報のみでピアノを勉強していました。ピアノの先生が練習曲を片手ずつ弾いたり、指使いや強弱などを言いながら録音してくれたのが、当時の私にとっての楽譜のようなものだったのです。
  しかし、段々と曲が複雑になるにつれ、聴きとったものを正確に再現することに限界を感じるようになっていきました。けれど私の心の中には、 「ここで諦めるのは絶対にいや、もっともっとピアノを勉強したい」という強い思いがありました。そんな時に出会ったのが点字楽譜だったのです。
  「やったあ。私にも読める楽譜がある。」しかし、それはまるで暗号のようなもの、なかなか教えてくれる人と出会えず、音楽科のある東京、大阪、京都の盲学校へ習いに行きました。各校の先生方は限られた時間の中で、とても熱心に指導をして下さり、そのお陰で私は点字楽譜の基礎をしっかりと身につけることが出来たのです。
 それからは、ひたすらいろいろな曲の楽譜を読み取る練習の日々が続きました。点字楽譜は活字とは違い、譜面を見ながら演奏をすることが出来ません。つまり、一曲を通して弾けるようになるためには、楽譜に書き込まれたこと全てを憶えてしまわなければならないのです。最初の頃はそれがとても大変で、読み間違いもたくさんありました。 「見えてたら、こんなしんどい思いせんで済んだのに。」そう挫折しそうになったことも一度や二度ではありません。しかし、きっといつかはすらすら読めるようになる。そう信じて練習を積み重ねた結果、少しずつ暗譜のスピードや確実性が上がり、諦めなくて良かったと思える日がやってきたのです。私も自分で作曲者の思いを読み取って表現できる。「なんて素晴らしいんだろう」。そんな喜びを味わい、これまで以上にピアノにのめり込んでいく私がそこにいました。そして、いつかは演奏を通して聴き手に感動を届けられるようなピアニストになりたい、という大きな夢を抱いたのです。この気持は今でも決して変わりません。
 そんな私をずっとサポートして下さっているのが、楽譜点訳ボランティアの皆さんです。ボランティアの方々は、一度も会ったことのない私のために、何ヶ月も何ヶ月もかけて楽譜を点訳して下さいます。この支えのお陰で私は大好きなピアノを学び続け、夢を追いかけることが出来るのです。いつか直接会って感謝の気持ちを伝えたい。そして私の演奏を聴いて頂きたい。そのためにも必ず夢を叶えると私は堅く決意しました。
 今、点字楽譜はほんの一部の視覚障がい者にしか使われていません。また活字に比べ読みながら演奏出来ないことや、出版されているものがはるかに少ないなどといった、 不便な点があることも事実です。けれど、もっと素敵なことがあると私は思います。それは、一冊一冊を何ヶ月もかけて一生懸命点訳してくれたボランティアさん達の心の優しさや暖かさ、そんな思いが詰まった楽譜はすべて私に大きな幸せをもたらしてくれる、大切な大切な宝物です。この宝物をもっと大事にしていきたい。そして点字楽譜の素晴らしさと必要性を訴え、未来に継承していく存在になりたい。これは、「ピアニストになりたい。」という思いとともに、点字楽譜が私にくれたもう一つの大きな夢です。 これからも支えてくれる方々への感謝の気持ちを胸に、二つの夢の実現に向けて歩み続けます点字楽譜とともに。御静聴ありがとうございました。  
  

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