点訳アラカルト


第25回 「アイメイトのゴールデン君」
2003.10.1


私が楽譜点訳を始めてからそろそろ10年になります。楽譜の点訳はしているものの、その楽譜がどのように使われているのか、ましてそれを使っているユーザーさんのコンサートに行く機会は少ないのが現状です。

少し前になりますが、ユーザーの方の演奏を聴きに点訳仲間と行きました。自分達が少しでも関わった曲が演奏されるのは嬉しいことです。なんとなく身内になった気分でした。

コンサート開始のチャイムが鳴り会場が暗くなって緊張感が漂ったとき、アイメイトのゴールデンレトリバーが目に入り、一瞬会場が和みました。演奏者がゴールデンレトリバーと一緒に出られるとは知りませんでした。

ゴールデン君(本当の名前は知りませんが・・・)はステージの中央へ来たら足元に座り、演奏が始まるまでの少しの間首だけもたげて一渡り会場を見渡し、状況を把握しようとしているようでした。まさか携帯鳴らす人はいないかと、見回しているわけではないのでしょうが・・・。

演奏が始まると前足の上に首を乗せて、そのうち目を閉じて私達と一緒に聴いているのでした。曲が終わると立ち上がってすぐ演奏者の方を見る様子が「もう帰るの?それとも、もう一曲弾くの?」と、言っているようでした。

そしてまた次の曲のときもじっと動かないで私達と一緒に聴き、終わったら今度は前足をうーんと伸ばして「あーあ、座っているのも楽じゃない・・・。」という風にのびをする様子が何ともいえず可愛らしく、会場から思わず笑いが出るようでした。

点訳しているだけでなくその人の演奏を聴くというのは実は、私たち自身の励みにもなっていることを痛感したひと時でした。
トニカ会員
次回もお楽しみに・・・。

 


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