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2003年秋、私達は新たな賛助会員制度の導入という目的のために賛助会会員の募集をいたしました。それにより、多くの方々から賛助会会員の申し込みや、ご寄付を頂いております。本当に有難うございました。「トニカ」一同深く御礼申し上げます。
「トニカ」の賛助会員制度は、点字楽譜の原本価格提供と、点訳料金の補助というふたつの大きな目的を掲げることになりました。当初1年間という期限をつけて始められたこの点訳料金補助制度を、私達は持続させるべく話し合いを続けています。どうか皆様今後もなお一層のご支援を賜りたくお願い申し上げます。日頃点訳に追われている私達も、時には楽譜から目を上げ、点字を取り巻く社会に広く目を向けることが必要なのだと実感しております。
昨年の夏、私は作家の大江健三郎氏が朝日新聞に書かれた「折り鶴にたくされた祈り」という一文を読みました。広島で被爆した少女が、千羽鶴を折ることで回復の望みを託したがかなわなかった。その願いにつないで全国から、世界の国々から折り鶴が送られた。その14万を超える祈りの折り鶴を一人の心無い学生が燃やしてしまった。という事件のことに触れ、その折り鶴をおる行為、注意深く集中して鶴を折る行為は祈りだと書かれていました。その祈りは被爆した少女にまでつながる祈りだとありました。これを読んだ時に、私は点訳する心を思ったのです。
20年前、私達は点字版で、あるいは点字タイプライターで点訳していました。間違えないように、一点一点注意深く。それでも間違えることに恥じ入りながら、それ以上にそんな楽譜でも使っていただけることを感謝しながら。その作業はまさしく祈りの行為であったように思います。今、パソコン点訳によってその作業は大変便利になりました。インターネットで点字データをダウンロードすることも出来るようになりました。この世で「1冊きりの点訳書」から自由に複製出来るようになりました。そのことに感謝しながらも、私達は折り鶴を折るような祈りに満ちた点訳をしたいと願うのです。そして、深夜静まりかえった部屋で無心にパソコンのキーボードをたたくメンバー、目をこすりながら校正の点字に目を凝らす点訳のお仲間を思う時、それは確かに祈る心として点字を読む人の指のところへとつながるものだと確信しているのです。
(まつなが ともこ) |