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「楽譜点訳者に点字タイプライターを提供するためのチャリティーコンサート」1981年6月、新聞にそんな小さな記事を見つけました。それが私と点字楽譜との出会いでした。点字で書かれた楽譜があるということ、またそれを使って演奏する音楽家がいるということ、それは私にとって驚きと共に大変興味深いものがありました。1987年4月、1台のパソコンを購入し、自宅の一部屋を開放して楽譜点訳の会を設立しました。会の名称を、点字楽譜普及会「トニカ」としました。
トニカはある調の主音で、音階の第一音です。旋律の中心になり最も重要な音で、曲の終止符になることが多くあります。私たちの「トニカ」はその音に重ねられた三和音を意味します。すなわちドミソの和音の事です。この命名には様々な意味が込められています。
点訳は一人ではできません。必要とされる楽譜があって、点訳者がいて、それを校正する数人のメンバーがいて、それを届けるための細かな仕事を手伝うメンバーがいて、そして最後にその楽譜を演奏して頂き、私たちの点訳した楽譜は初めて完成するのです。たった一曲でも、そこには複数のメンバーの力が結集して楽譜は出来上がるのです。
この20年間私たちは数え切れないほどの楽曲を点訳してきました。でもそれ以前にそれだけ多くの点字楽譜を必要とするユーザーのかたが存在したということです。
「トニカ」は音楽を専門とする人たちの会ではありません。確かに会の中には音楽を専門に勉強したメンバーもいます。それは大変ありがたいことです。それにもまして心強いことは、メンバーの中に様々なジャンルの点訳経験者が存在するということです。メンバー個人個人の知恵と経験を共有する事。その信頼関係こそが「トニカ」20周年の大きな意義と私の願いでもあります。確かに会の中で人間関係の不協和音が鳴り響くこともあります。それでもトニカへ解決します。それは主和音で解決の和音でもあるから? いいえ皆さん「トニカ」が好きで、楽譜の点訳が大好きだからです。
これまで「トニカ」をご利用下さったユーザーの皆様。皆様が「トニカ」の楽譜を使って下さらなければ「トニカ」の20年はありえませんでした。「トニカ」は皆さんに育てて頂きました。心よりお礼申し上げます。有難うございました。
これまで「トニカ」をお心に留めて下さり、多くのお励ましやご支援を下さった皆様、皆様のお陰で「トニカ」は20周年を迎えられました。本当に有難うございました。私たちが望むことは、いつも点字楽譜を使う方々と共に歩みたいということです。私たちは明日からも今までと同じ気持ちで楽譜を点訳します。 |